〈2022/10/05〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
保育士さんのストレスとモチベーション
神奈川大学 渡部かなえ 神奈川大学産官学連携研究事業 幼児の健やかな育ちを支援し、子どもの命と健康を守って日々保育をしてくれる保育士さんは、子どもにとっても、子どもを園に預ける保護者にとっても、そしてその保護者が働く職場や社会にとっても必要で重要な存在です。そんなかけがえのない存在である保育士さんですが、近年、募集に対する応募者は減っており(参考資料1)、また多くの保育士が早期に離職してい...
〈2022/09/02〉
コラム
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
スマホを育児に利用することへの保護者の思い
神奈川大学 渡部かなえ 神奈川大学産官学連携研究事業 スマートフォンは今や生活必需品のようになっており、育児にスマホを使うことについてもしばしばマスコミなどでも取り上げられ、「スマホ育児」という言葉もすっかり定着しています。スマホ育児には賛否両論、様々な意見がありますが、実際に子育てをしている保護者の方々はスマホ育児をどのように考えているのでしょうか? 私のゼミの男子学生2名がこの問題に関心を持...
〈2022/06/01〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
子どもの虐待死
神奈川大学 渡部かなえ 神奈川大学産官学連携研究事業 昨年(2021年)に警察が摘発した児童虐待は2174件で、54人の子どもが亡くなっています(資料1)。母親の交際相手の男性による虐待で亡くなった子ども(3歳の男の子)など(資料2)、痛ましい事例の報道には胸が痛みます。2020年度に児童相談所が対応した児童虐待の件数は全国で20万件を超え、過去最多でした(資料3)。 子どもの虐待死についての詳細は、厚生...
〈2022/02/03〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
コロナ禍で子どもたちの不登校もパソコンやスマホを使ったいじめも最多に
神奈川大学 渡部かなえ 神奈川大学産官学連携研究事業 不登校は、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的な要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの、と定義されています(文部科学省:資料1)。 文部科学省の調査によると、2020年の不登校の子ども(小中学生)は19万6127人で、過去...
〈2022/01/05〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
男性の家事・育児の時間が出生率に大きく関与
神奈川大学 渡部かなえ 神奈川大学産官学連携研究事業 現在の人口を維持するのに必要な出生率(合計特殊出生率)は2.07ですが、日本の出生率がこの水準を上回ったのは1973年が最後です。出生率は下がり続けており、厚生労働省が2022年1月4日発表した2020年の人口動態統計によると、ついに1.34になりました。超少子化に陥る分水嶺1.5を下回ってしまうと、その後回復することは難しく、少子化がどんどん進んでいくとされ...
〈2021/10/04〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
保育士不足と離職
コロナ禍の影響で待機児童数は減っているように見えますが(前月:2021年8月の記事をお読みください)、保育士不足が解消されたわけではありません。 まず、保育士の現状を見てみます。保育士として働いている人の人数は、令和元年の社会福祉施設等調査によると400738名で、うち保育所等で働いている保育士は380094名です(資料1)。一方、各都道府県に登録されている保育士の数は令和2年4月1日時点で1665549名で(資料2)、...
〈2021/09/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
待機児童は過去最少だが、女性の就業は妨げられ、保育施設事故は最多
待機児童の解消を図り女性の就業率8割に対応するため、厚生労働省は平成30年~令和2年度(2018年4月~2021年3月)の3か年計画「子育て安心プラン」を実施しました。2021年度初頭(4月1日時点)の待機児童数は過去最少の5634人で(資料1)、待機児童の解消は改善されているように見えます。しかし、この数値の背景には、保育所の受け入れ人数が増えたことだけでなく、新型コロナウイルス感染への不安から多くの保護者が子どもを...
〈2021/08/03〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
お腹に赤ちゃんがいるお母さん、体重管理に悩まなくても大丈夫
2021年3月、日本産婦人科学会が妊婦さんの体重増加の目安を引き上げました。体重管理をつらく感じたり、体重測定で厳しい指導がなされ、妊婦検診が近づくと緊張し不安になる妊婦さんが少なくなかったのですが、3㎏程度のゆとりを持った値に変更されました。 表1:日本産婦人科学会の妊婦の体重増加の指標 妊婦さんが肥満すると妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)、妊娠糖尿病などを発症するリスクが高まることや緊急帝...
〈2021/07/09〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
子どもの自殺 -コロナ禍で最多に
令和2年度、過去最多の500名近くの子どもたちが自ら命を絶ちました。下のグラフは、平成28年度~令和2年度の子ども(小学生・中学生・高校生)の月別の自殺者数です。赤色が令和2年度です(資料1)。なお、令和2年度の計479名は厚生労働省が暫定値として集計したもので、本論もそれに基づいて文部科学省が作成したグラフを用いて検証しますが、のちに発表された確定値は499名です。 令和2年度に自殺した子どもは前年比1.4...
〈2021/06/10〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
世界中で出生数が減少 -新型コロナ感染症の影響―
2020年から現在にかけて、世界中に広がった新型コロナウイルス感染症によって、多くの人の健康が損なわれ、尊い命が失われました。そして新しい命の誕生も大きな負の影響を受けたことを、各国の統計調査が示しています。 昨年(2020年)1月に日本では74672人の赤ちゃんが生まれていますが、今年(2021年)の1月は63742人で17.1%減少しています(参考資料1)。ヨーロッパで最初に新型コロナウイルス感染拡大の中心地となった...
〈2021/04/30〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
ラン活で早まるランドセルの購入時期
「ラン活」とは、小学校入学を控えた子どものランドセル選びや購入するための活動を指します。4月の入学までに購入すればよいはずですが、この十数年間で購入時期はずいぶん早まっています。下図は総務省の最新の家計調査(資料1)による通学カバンの購入時期の変遷です。 図1:総務省の最新の家計調査(資料1)による通学カバンの購入時期の変遷 2007~2009年は年が明けて入学まで3か月くらいになってから購入する...
〈2021/03/30〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】新型コロナ幼児への影響 - 活動低下
2020年の春、緊急事態宣言が発出されて外出自粛が強く求められ、子どもたちも通常通りに保育所や幼稚園に通うことができなくなったり、運動会が中止になったりして、運動の機会が減りました。また公園の遊具にはテープが張られて利用できなくなり、運動施設も閉鎖・休業になって、体を動かして遊べる場所も制限されました。多くの保育者や保護者が子どもたちの運動不足を心配していましたが、その懸念は残念ながら当たっていた...
〈2021/02/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】児童虐待・DV通告が過去最多
2021年2月4日に警察庁が発表した昨年1年間の犯罪統計情勢1)によると、児童虐待の疑いありと通告された件数は106960件で、前年比8.9%増、過去最大となりました。(図)。その内訳は、心理的虐待が78555件、身体的虐待が19452件、怠慢・拒否(ネグレクト)が8858件、性的虐待が295件でした。 児童虐待の7割を占める心理的虐待は、子ども自身への暴言や拒絶的な態度と子どもの目の前での家族への暴力です2)。配偶者からの暴...
〈2021/01/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】身近な自然を楽しもう
自然に親しみ、自然の驚異に目をみはる感性(センス・オブ・ワンダー)1)を豊かにすることは、どの年代にとっても必要ですが、自然や生き物を五感で知覚した原体験(proto-experience)がその後の事物・事象の認識に大きな影響を及ぼすので2)、子ども時代の自然体験はとても重要です。 また、レイチェル・カーソンは、子どもたちのセンス・オブ・ワンダーを育むために大人にできる・大人がやるべき一番大切なことは、「指導...
〈2020/12/14〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】サンタクロースって本当にいるの?
1897年のアメリカの新聞 The New York Sunに、”Yes, Virginia, There is a Santa Claus “ (そうです、バージニア、サンタクロースはいます)という素敵なタイトルの社説が掲載されました。これは 8歳の女の子バージニアから新聞社に届いた「サンタクロースって本当にいるの?」という手紙に応える形でフランシス=P=チャーチ記者が書いたものです(1)。信じること、想像力の翼を広げることの大切さを、サンタクロースを...
〈2020/10/30〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】幼児教育の学習費
文部科学省は、幼稚園から高等学校に子どもを通わせている保護者が学習のために支出した1年間の費用について隔年で発表しています。最新の調査報告(調査年度は平成30年、発表は令和元年)から、子どもにかかる教育費について考えてみます。なお、文部科学省の調査であるため、幼児教育の調査対象は公立・私立の幼稚園で、管轄外の保育所や認定こども園は含まれていません。 表1 学校種別学習費総額(年額) まず、学校教育...
〈2020/09/29〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】エピジェネティクスから見たコロナベビーと妊産婦に必要な配慮と支援
遺伝とは異なる、母体の環境やコンディションが胎児の発育に影響を及ぼし、それが生涯に渡る健康に影響する現象(エピジェネティクス)があります。 第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの占領下にあったオランダは深刻な食糧不足に見舞われ、この時期に母親の胎内にいた多くの赤ちゃんは低出生体重児でした。そして何とか育ったこの小さかった赤ちゃんたちは成人後、生活習慣病予備軍となり、糖尿病や心臓血管系の疾患に悩まさ...
〈2020/08/04〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】みんながヒーロー 新型コロナウイルスなんかに負けないぞ
新型コロナウイルス感染症の拡大は、身体の健康だけでなくメンタル・ヘルスにも深刻な影響を及ぼしています。コロナが世界中で猛威を振るう中、大人だけでなく子どもも大きな不安とストレスにさらされています。そんな子どもたちの、コロナに関する不安や心配な気持ちに寄り添ってケアすることを目的として、国連の関係機関である「機関間常設委員会(IASC)」の「緊急時のメンタルヘルスと心理社会的支援に関するレファレンス...
〈2020/07/02〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】コロナで子どもにもストレス
新型コロナウイルスの感染拡大は子どもたちの生活や心にも大きな影響を及ぼしています。 国立成育医療研究センター(東京都)が行ったアンケートの保護者の回答から、幼児の生活と心にも深刻な状況が生じていることがわかりました。 まず生活のリズムですが、2歳以上の子どもの半数において、夜寝る時間と朝起きる時間のずれが生じています。 ▲図1:2歳以上の子どもの就寝・起床時間のずれ(乳幼児(0~5才)の保護者1,566名...
〈2020/06/05〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】ともだちがおもい病気になったとき
小学校5年生の国語の教科書に「5年生で読みたい本」として紹介されている1冊の絵本があります1)。作者はスヌーピーやチャーリー・ブラウンというチャーミングなキャラクターで人気のチャールズ・M・シュルツ氏です。幼稚園や保育所ではなく小学校のしかも高学年の教科書でマンガのキャラクターたちの絵本というとビックリなさるかもしれませんが、薬の副作用で髪の毛が抜けてしまう白血病の子どもをクラスメートたちに理解さ...
〈2020/05/01〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】子どもと大学生の共育-学生の研究(1)
神奈川大学産学連携研究事業の「大学生と子どもが遊び、共に育つ『共育』」では、教員だけでなく学生も保育所の協力を得て教育研究活動を行っています。今回は、その成果の1つである、学生が卒業論文研究として行った、保育に関わる際に抱くポジティブな感情とネガティブな感情について、大学生と保育士(専門職)を比較した調査研究をご紹介します。保育所にお伺いして子どもたちと遊びを通して関わった学生たちと、その園の...
〈2020/04/01〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】感染症と子どもの死因
新型コロナウイルスの感染が日々広がっており、保育士や子どもの感染も確認されています。高齢者と基礎疾患を持つ人は重症化する傾向がある一方、子どもにおいては感染者数も少なく、重症化もしにくいと言われています。しかし実際にどうなのかを確認するため、厚生労働省の発表(資料1・2)を基にグラフを作成してみました。 日本では子どもの感染者数は確かに少なく、重症化や死亡例はありません。最も感染者数が多いのは50代...
〈2020/02/19〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】新型コロナウイルス感染予防のためにも手洗いを
中国の武漢で発生し、世界中に感染が広まっている新型コロナウイルス。日本でも感染者が日々増えています。保育者や保護者の方は小さな子どもたちにも感染が広がることを心配していらっしゃると思いますが、子どもの感染者は少ないです。2020年1月30日の時点で、中国の感染確定者数は9692名でしたが、そのうち子ども(生後1か月から17歳)は28名のみでした(資料1)。日本では子どもへの感染はまだ確認されていません。なぜ子...
〈2020/02/14〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】予防できたはずの子どもの死
日本の新生児死亡率は0.9%と経済協力開発機構(OECD)加盟国36か国のなかで最も低く、「赤ちゃんが最も安全に生まれる国」と報告されました。しかし5歳以下の幼児の死亡率は2.5%と2倍以上になっています(資料1)。なぜ幼い子どもの命を守ることができていないのでしょうか? 日本小児科学会が、4つの自治体(東京都・京都府・群馬県・北九州市)の2011年の子どもの死因を検証したところ、全368件中27.4%にあたる101件は防...
〈2020/01/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】元気に遊ぶ体力のある子とそうでない子の二極化
「子どもの体力が低下している」といわれています。 幼児がよくやっている遊びは「お絵かき、折り紙、ぬり絵、粘土遊び」や「ビデオ・DVD・TVを見る」など1)の室内での静的・受動的な遊びということからも、幼児が元気に外遊びや運動遊びをすることが少なくなっている、という現状がうかがえます。では、幼児の体力は実際にはどのくらい低下しているのでしょうか?文部科学省が選定した地域のモデル園における体力向上の基礎...
〈2019/12/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】注意!SNSへの子どもの写真のアップ
TwitterやFacebook、インスタグラムなどのSNSには多くの個人が写った写真がアップされています。その中には子どもたちの元気な姿やかわいい様子が撮影されたものもたくさんあります。自分のアカウントでSNSのサイトにアクセスした際に、直接は知らないお子さんの写真が画面に表示されると、ほほえましく思う反面、「見ず知らずの不特定多数にこんな風に見られて大丈夫なのかな」と心配になります。 SNSにアップされた写真は簡単...
〈2019/11/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第18回 スウェーデンと日本の幼児教育カリキュラムの比較
幼児教育には、子どもたちが幸せな人生を送り、より良い社会をつくっていくことができる人になるために、このような力をつけて育ってほしいという願いが込められており、幼児教育カリキュラムには、その国の文化や価値観(何を大切と考えるか)が反映されています。前回は、スウェーデンの幼児教育カリキュラム(Lpfö18)1)のコンセプトを紹介しました。 今回は、スウェーデンと日本の幼稚園教育要領(*注)との比較を通して...
〈2019/10/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第17回 スウェーデンの幼児教育カリキュラム
今回と次回の2回に分けて、子育てしやすい国・児童福祉が充実している国の代表格であるスウェーデンの幼児教育カリキュラムを紹介します。今回は、スウェーデンの幼児教育の概観と基本理念についてです。 スウェーデンの幼児教育カリキュラムの冒頭には「民主主義がプレスクールの基盤を形成する」と記載されています。また、日本の日本の保育所保育指針・幼稚園教育要領・幼保連携型認定こども園教育・保育要領認定こど...
〈2019/09/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第16回 学童保育も不足
待機児童の問題で困っているのは保育所への入園がかなわなかった幼児とその保護者だけではありません。小学校入学以降の子どものための学童保育も不足しています。下図は、厚生労働省(参考資料1、参考資料2)が発表した、学童保育の利用希望者数から児童館などの施設の登録児童数を引いた、利用できなかった児童数(=待機児童数)の推移をグラフに表したものです。2001年に小泉純一郎内閣が掲げた「待機児童ゼロ作戦」を受...
〈2019/08/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第15回 保育所の面積基準の国際比較
子ども達が元気にのびのび育つには十分な広さが必要です。認可保育所では保育室や屋外遊技場(園庭など)の広さが設置基準で定められていますが、筆者が調査で訪れた海外の保育施設と比べると、日本の保育所は狭く感じられます。全国社会福祉協議会が海外の保育施設の子ども1名あたりの面積(職員室や事務室、調理室やトイレ、廊下や階段、倉庫などを除く)を調査しているので(資料1)、2歳以上の子ども一人あたりの保育室の面...
〈2019/07/16〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第14回 日本の保育の成果-幼児のほとんどは適正体重
前回、このコラムで肥満判定について紹介しました。成人は生活習慣病およびその予備軍である肥満者の増大が問題になっており、逆に若年女性では不必要なダイエットで健康を損なうことが心配されています。子どもについても「肥満児が増えている」という表記をいろいろなところで目にします。先進国でも米国やニュージーランドでは小児肥満が子どもの健康問題となっています(資料1)。しかし筆者はここ何年も勤務校および自宅周...
〈2019/06/10〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第13回 肥満・痩せの判定
子どもの健やかな育ちを計る1つの目安に肥満・痩せの判定がありますが、その判定方法には体重だけを用いるもの(同年齢の標準体重に対してどのくらい体重が多いか少ないかを%で示す)と、身長と体重の関係から導き出すものがあります。体重のみを用いる計算式は、年齢を問わず同じですが、 肥満度= (実測体重)-(標準体重) ―――――――――――――×100 (標準体重) 身長と体重を用いる計算式には2種類あります。 ローレル指数= ...
〈2019/05/20〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第12回 「教える」と「学ぶ」の相互性の大切さ
運動機能は、Gross Motor Skill(全身性の大きな動き)とFine Motor Skill(手指などの繊細でち密な動き)に分けられます。幼児期にはどちらの運動機能も大きく育ちます。Gross Motor Skillの育ちを客観的に評価するには運動能力テスト(走る・跳ぶなど)が用いられ、Fine Motor Skillの育ちは「道具などの操作の対象物を上手に使える・扱える」をかかった時間(スムーズにできたか、なかなかできなかったか)や出来栄えから把...
〈2019/04/24〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第11回 子どものアレルギー
春は、花粉症に悩まされている人には辛い季節です。大人だけでなく、子どものアレルギー患者さんも増えています。では、実際に、どのくらいの子どもがアレルギーに罹患しているのでしょうか。また、いつ頃から増えたのでしょうか。文部科学省の学校保健統計では、アレルギーの中のぜん息とアトピー性皮膚炎に罹患している子どもの割合が校種別に発表されているので、そのデータから幼稚園児(*)と小学生で両疾患をもつ子ども...
〈2019/03/11〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第10回 福島のお母さん・お父さんは頑張っています
2011年3月11日、東日本大震災と原発災害が発生しました。いまだ多くの人たちが復興への道半ばにあります。特に福島では、災害から数年経った後でも、子どもが元気に生まれて健やかに育つことに関して、お母さんたちが不安や悩みを抱えていることが報告されています1)。また災害で、お母さん(妊産婦)だけでなく、パートナー(夫)も様々なリスクに直面しました2)。では、日本の出生率が近年さらに低下したのは災害の影響なの...
〈2019/02/12〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第9回 いじめ
いじめは大きな社会問題です。特に子どもの場合は、心と体の健やかな育ちに重大な影響を及ぼし、生涯にわたる大きな傷となってしまう恐れがあります。いじめはどの年齢でも発生する可能性があり、幼児でも、東京都立教育研究所の調査報告(幼稚園児:4歳92名、5歳149名)によると、担任による聞き取り調査に対して約6割が「いじめられたことがある」と答えています。幼児期のいじめは身体的な不快感が6割前後と多く、言葉による...
〈2019/01/21〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第8回 少子化対策の成果が上がらない理由
2017年に生まれた子どもの数は過去最少を更新し、出生率は1.43と2年連続で低下しました1)。1995年からのエンゼルプランにはじまる様々な少子化対策が講じられてきていますが、残念ながら成果は上がっていません。なぜなのでしょうか。 図)日本、スウェーデン、フィンランドの合計特殊出生率の変遷 図は、1968~2016年(日本のみ2017年まで)の約50年間の、日本、スウェーデン、フィンランドの合計特殊出生率2)の変遷を実線...
〈2018/12/11〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第7回 子どもの思いや願い、可能性を観察・記録する保育の重要性
保育の観察・記録は、子どもを理解し把握して健やかな育ちを支援していく上で重要です。しかし従来の観察や記録による子ども理解は、年齢に応じた発達をしているか(「できる」・「できない」)に着目したり、目標を設定して達成することをみんなで一斉に目指す傾向がありました。もちろん一人ひとりが目標をもってそれに向かって進んでいくことは、大人にとっても子どもにとっても大切なことです。けれど、子どもに「できない...
〈2018/11/23〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第6回 子どもの体力・運動遊びの二極化
運動会の季節になりました。神奈川大学産官学連携研究事業のパートナーである保育所(*)でも、大学の運動施設を使って運動会を開催し、主役の子ども達と保育士の先生方、保護者のみなさま、そして大学生も加わって、元気いっぱい楽しい半日を過ごしました。 健やかな育ちのために元気に体を動かして遊ぶことは重要ですが、近年、「子どもの体力が低下している」といわれています。幼児がよくやっている遊びは「お絵かき、折り...
〈2018/10/15〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第5回 幼児期とその後の健康教育のつながり~日本とスウェーデンの事例から~
幼児期の健康は、子ども時代だけでなく、その後の長い人生を健やかに過ごす土台をつくるためにも重要です。子どもの健康福祉でも国際的な評価が高いスウェーデンと日本のプレ・スクール(保育所や幼稚園など)に通う子どものケアを通して、在園時の子どもの健康を守ることと生涯にわたる健康管理ができる力を育てることについて考えます。 健康関連の行事で日本とスウェーデンで大きく異なるのは健康診断です。日本では学校保健...
〈2018/09/19〉
研究データ
主任研究員 石毛賢
【保育士の専門性についての考察】第2回 専門性の前提は倫理観、人間性
第2回ということで、保育士の専門性に関して少し話を進めていきたいと思います。就業している場所により、保育所保育士や施設保育士とでは業務内容が異なりますが、本議論では、保育所保育士に焦点を当てて述べていきます。 まずは(保育所)保育士の専門性を議論するにあたり、保育士資格が国家資格であるので、厚生労働省から告示された「保育所保育士指針」からひもといていきましょう。 同指針の第5章で、求められる専門性...
〈2018/09/03〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第4回 母親指標が高い=お母さんに優しい国、とは言えない
待機児童の問題は解消されないまま、保育の無償化が2019年10月から実施されます。お子さんが保育所に入れるご家庭はよいのですが、多くの「保育園、落ちた」親御さんが困ったままの状態で置き去りにされている日本は、子どもを産み育てにくい国1)です。お母さんに優しい国ランキング(母親指標ランキング)2)で、先進国の中で日本は順位が低いことを憂える発言や記述も各所でなされています。では、母親指標ランキングが上...
〈2018/07/24〉
研究データ
主任研究員 石毛賢
【保育士の専門性についての考察】第1回 保育士給与は安いのか
今回より、「保育士の専門性についての考察」というテーマで、コラムを執筆します。まずは初回ですので、当方のスタンス、これから連載していく内容などについて少し紹介していきたいと思います。 私の論調は、「保育士の処遇を改善し、憧れの職業という認識を、世間一般により浸透させたい」というスタンスで終始行っていきます。そのため、現状の保育の施策や保育士養成、保育現場での問題などを紹介・解説しながら、保育士の...
〈2018/07/10〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第3回 日本の子育て支援への公的支出は少なすぎる
1990年の合計特殊出生率1.57(1.57ショック)が、日本の人口置換水準(人口が減少せず一定数を維持できる出生率)2.04を大きく下回って以来、政府も子育て支援に力を入れるようになりました。しかし、少子化はさらに進んでおり、昨年(2017年)の合計特殊出生率が1.43でした。一方、日本に先んじて少子高齢化社会の傾向を示していたスウェーデンは近年、出生率が上昇傾向に転じています。またニュージーランドの出生率は先進国...
〈2018/06/12〉
研究データ
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第2回 幼児期に遊びを通して育まれる「10の姿」が生涯に渡る教育の土台になる
2018年4月から改訂された新しい保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が施行されました。大きな変更点は、保育内容の5領域「健康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」、「表現」を相互に関連させながら、10の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)を育んでいく、と新たに記載されたことです。 10の姿とは、「健康な心と体」、「自立心」、「協同性」、「道徳性・規範意識の芽生え...
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