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調査研究・コラム

コラム

〈2024/10/02〉

主席研究員 桜井智野風

基本的な動きについて その1 「走る」

「上手な字」と「きれいなランニングフォーム」の共通点

「かけっこが速くなりたい!」これは子どもたちだけではなく、パパやママたちの願いであるはずです。速く走るためにはどうしたらよいのか?これは速く走るための動き(フォーム)を身に付けることが必要です。まさに幼児期にこのランニングフォームを身に付けておくことは、将来のスポーツ活動において非常に大事なことといえます。今回はこのランニングフォームの習得についてお話ししたいと思います。

子どもは歳と共に身長が伸び、会話も大人びてきます。しかし、残念ながら文字を書く能力は努力しないと獲得できません。上手な文字を書くためにはどうすればよいでしょうか?答えは一つ。お手本を見ながらひたすら練習するしかないのです。その積み重ねがきれいな字となって実を結びます。前回のコラム「プレ・ゴールデンエイジ」で説明したように、私たちの巧みさやスキルは、幼児期から小学校低学年時代に著しく発達し、小学校卒業の時期にはほぼ完成を迎えます。その後、中学生くらいからはあまり大きな発展が無くなってしまいます。文字を書くことはこの巧みさやスキルに入りますので、幼少期から小学校期に大きく伸びる能力です。大人になってから文字を書く練習をしても、子ども時代に比べ変化・上達しないのはこのためなのです。

では、走るときのランニングフォームはどうでしょうか?脚を引き上げ下す。腕を後ろに引き上げて前方に素早く引き出す・・・。字を書くことに比べれば随分と複雑な動きに感じます。しかし、走るためにカラダを動かしているのは、字を書いているときと同じ、身体を構成する「筋肉」なのです。確かに字を書くときよりも大きな筋肉をダイナミックに使ってはいますが、全体のバランスを整えてリズムをもって動いているところは、字を書くことと共通します。実はランニングのフォームも一種のスキルであり、巧みさの表れなのです。ということは、ランニングフォームを覚えるためには幼児期から小学校低学年期における繰り返しの練習が必要なのです。字を練習することと同じく、良いお手本を見て模倣(まね)をすることにより、きれいな動きが習得できます。

難しいのは、お手本と照らし合わせができないことです。自分の動きがお手本の動きに近づいているかどうかを確認できないところが、「きれいな字の習得」と「きれいなランニングフォームの習得」の違いとなるのでしょう。では、誰がお手本となり先生となるのでしょうか?これはパパやママです。「私は走るの得意じゃないし・・・」と苦笑いをされている方もいるかもしれません。しかし、ランニングフォームの良し悪しは判断できると思います。もし判断できない場合は是非園にご相談ください。先生方はその方法をよく勉強しています!

幼児期に走ることに興味を持てず、みすみすランニングフォームの習得のきっかけを逃してしまうのは残念過ぎます。「字」は大人になってから書く量やスピードが増すに従い、修正はますます難しくなります。幼児期に獲得したきれいな動きは、小学校から中学校へと成長に伴い力強さが加わり、より実践的なランニングフォームとなっていくのです。

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