コラム
〈2024/08/31〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
子どもの感染症
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
夏は子どもの感染症が流行しやすい時期です。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと表記)の位置づけが2023年5月に5類に引き下げられましたが、その後も患者の発生は続いており、この夏は再び患者数が増加していて(図1)、感染予防への注意が引き続き必要ですが、コロナ以外の感染症にかかってしまった子どもも大勢いました。
図1:新型コロナウイルス感染症の患者数の推移 (資料1)
昨年と比べて今年、患者数が激増したのが手足口病です(図2)。今年の7月の感染者数(グラフ実線)は昨年(グラフ点線)の10倍以上でした。手足口病は、手のひらや甲、足の裏や甲、口の中や歯ぐきなどに赤い発疹や水ぶくれ、潰瘍ができます。痛みやかゆみ、発熱することもあります。多くは自然に回復しますが、子どもの場合は、時に重症になることがあるので注意が必要です(資料3)。
図2:子どもに多い感染症① 手足口病の患者数の推移 (資料2)
またマイコプラズマ肺炎も、一医療機関あたりの患者数が昨年の10倍以上になっており(図3)、かつ、現時点での患者数は手足口病の患者数よりは少ないのですが、手足口病は患者数が減少し始めているのに対し、マイコプラズマ肺炎は患者数が右肩上がりに増加しいます。
マイコプラズマ肺炎の患者の多くは子どもや若い人です。自然に回復することが多いのですが、重症化することがあり、特に14歳以下の子どもでは注意が必要です(資料5)。
図3:子どもに多い感染症② マイコプラズマ肺炎の患者数の推移 (資料4)
夏が過ぎてもこれらの感染症には引き続き注意していかなければなりませんが、それに加えて、これからは秋から冬に子どもが罹りやすい感染症への注意も必要になります。代表的なものはRSウイルスで、症状としては、発熱、鼻汁などの軽い風邪様の症状から重い肺炎まで様々です。RSウイルスの初回感染時は重症化しやすいといわれています。特に生後6ヶ月以内にRSウイルスに感染した場合には、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります(資料6)。
非常に感染力が強いノロウイルスによる感染性胃腸炎も、秋から冬にかけて流行する危険があります(資料7)。
どの感染症も、飛沫・接触・経口で感染します。予防と感染を広げないためにすべきことも、コロナと同じ、マスクの着用、手洗いや消毒、排便や吐しゃ物の適切な処理、そして感染が疑われるときは登園や登校を控える、です。コロナのパンデミックでの経験や学んだことを生かして、子どもたちを感染症から守り、感染を拡大させないようにしましょう。
【参考資料】