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調査研究・コラム

コラム

〈2024/06/07〉

主席研究員 桜井智野風

幼児期に肝心なのは「スキル」と「発達欲求」

パリオリンピック・パラリンピックまでもう3か月余りとなりました。活躍するアスリートたちが世の中に明るい話題を振りまいてくれるでしょう。子どもを持つ親の心としては、「うちの子も今からやればオリンピック選手みたいなスーパーアスリートになれるのかしらね?」と考えることはあるかもしれません。今回は子どもの運動・スポーツ実践に関して考えてみたいと思います。

 

「運動神経」とは?

「友達の○○さんは運動神経が良いね」などと親子の会話の中に頻繁に登場する「運動神経」とい言葉です。前回のコラム内でも少々お話ししました。では、この運動神経とは一体どんな神経なのでしょうか?実は残念ですが私たちが一般的に使っている意味での「運動が上手に行える神経」という神経は存在しません。私たちが口にする「運動神経」とは、①スキル(目的にかなった動きを自分の意志で行う能力)、②筋力(大きなパワーを発揮する能力)、③持久力(運動を持続させる能力)の3つの能力を総合的にさして使われています。このうちのどれか、もしくはすべての能力に優れていることに対して、運動能力が良いと評価されるわけです。

 

脳はもうおとなと同じ重さ

幼児期の子どもの脳の大きさは、ほぼおとなと同じ大きさです。それに比べて、骨や筋肉はまだまだ大きく強くなります。このことを考えてトレーニングしないといけません。幼児期から小学校前半に一番伸びる運動能力は、「器用さ」です。脳や神経はおとなと同じですから、その脳と筋肉をつなぐ神経のネットワークを使い育てるための運動・トレーニングがとても有効です。幼児期はリズム感を育てたり、正確な動き方・テクニックなどを練習したりするには一番いい時期です。

 

野球、卓球、テニス、ゴルフの選手

「野球やゴルフ、テニスや卓球の一流選手は、子どもの頃から専門的なトレーニングを行っていますよね?」そんな質問を受けることがあります。これはなぜでしょうか?答えは、これらの種目は「道具」を使うという特徴があるからです。小さいころからお箸の使い方や文字を書く練習をするのは、「器用さ」つまりは「スキル」を向上させるためです。バットやラケット、クラブなど道具を使用するような動きは、幼児期から興味を持たせておくことはある程度必要です。しかし、嫌がる練習を反復させるわけではなく、反復させるために必要な「楽しむ心」を育ててあげることを忘れてはいけません。

 

焦ってしまうと逆効果になりかねない

子どもたちの「できるようになりない!!上手くなりたい!」という思いを「発達欲求」と呼びます。

子どもにはおとなと同じ方法で教えることが一番楽なのかもしれません。しかし子どもには子どもの運動・トレーニングプログラムがあることを学ぶことが大切です。子どもの頃におとなと同じようなトレーニングを行わせることは、子どもの身体に必要以上の負担となりケガや故障ばかりか、心の翼を折ってしまうことにもつながるかもしれません。おとなの焦りやエゴは逆効果になりかねないことを忘れないでください。おとなが教えすぎて「発達欲求」を潰さないことが大事。幼児期の子どもの身体を考えた運動・トレーニングプログラムが浸透すれば、「うちの子」を含めた数多くのスーパーアスリートの誕生につながるかもしれませんね。

 

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