コラム
〈2024/06/07〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
幼児のサプリメント摂取を考える
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
コレステロール値を下げるという効能を謳って販売されていたサプリメントを摂取した人に深刻な健康被害が発生しました。いまだ健康を回復できていない人も多く、亡くなられた方もいらっしゃいます。サプリメントなどの健康食品は大人が対象のような印象がありますが、子どもを対象とした商品もたくさん販売されています。
厚生労働省が実施した、小学生から高校生の母親を対象としたアンケート調査によると、小学校低学年では12.4%、高学年では14.6%、中学生では17.5%、高校生では21.3%の子どもがサプリメントなどの健康食品を摂取しており、年齢が上がるほど摂取率は高くなっています(図1・参考資料1)。
図1:性別・学齢別のサプリメントなどの健康食品の摂取率(参考資料1)
また、子どもにサプリメントなどの健康食品を摂取させている母親は、一般消費者に比べ自身も利用しているとの回答が多くなっていました。
サプリメント使用の低年齢化は実はかなり進んでおり、国立健康・栄養研究所の調査によると、就学前の幼児(保育園児・幼稚園児)でも、既に8~15%が使用しています(参考資料2.3)。そして、就学前の幼児で使用している人数が最も多かったのは3歳児でした(図2、資料2)。厚生労働省の保育所における食育に関する指針(2007年・資料4)で、子どもたちは食を通して健康、人間関係、文化、いのちの育ち、料理など、様々なことを学ぶとされており、3歳児からは特に多様な学びの大切な機会になっています。サプリメントの摂取ではこのような豊かな食育はできません。
また、栄養素は不足すると健康的な発育発達に影響を及ぼしますが、過剰な摂取もまた健康被害の恐れがあります。食品を少し多く食べたくらいでは特定の栄養素の摂りすぎになることはあまりありませんが、サプリメントでは過剰摂取になって健康を害する恐れがあります。
図2:サプリメントを利用している年齢別の子どもの数(参考資料2)
注)グラフの灰色は、ビタミン・ミネラルのサプリメントの使用
グラフの黒色は、ビタミン・ミネラル以外のサプリメントの使用
幼児は食を通して単に栄養を摂っているだけではなく、元気に遊ぶこと、他の人と食を共にすることを楽しむことなどを、日々の食生活の積み重ねの中で育んでいきます。お子さんにサプリメントを与える背景には、「好き嫌がある・食べられないものが多くて栄養バランスが心配」、「身長を伸ばしてあげたい」、「丈夫な体を作ってあげたい」など、保護者のいろいろな思いや願いがあると思いますが、家庭では、子どもに無理をさせず、保護者も頑張りすぎず、まずは食を楽しむことを大切にしてください。どうしても心配な時は、サプリメントではなく、保健師さんなど専門職の方の栄養相談・発達相談を活用することをお勧めします。
【参考資料】