コラム
〈2023/08/28〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
夏、子どもの命を事故から守る
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
連日、猛暑が続くこの夏。溺水(参考資料1)や熱中症(参考資料2)などの子どもの痛ましい死亡事故が発生しています。
昨年(2022年)中学生以下の子どもが死亡・行方不明になった水難事故の現場は河川が最も多く(53.8%:参考資料3)、バーベキューを楽しめる大きな河原がある場所や上流域のキャンプ場が、繰り返し事故が発生する水難事故多発地点となっています(参考資料4)。人が大勢いても、大人たちもテント張りやバーベキューの準備などの作業をしていたり、飲食をしたりしていると、誰も子どもを見ていないという「安全確認の空白」状況が生じます。
2019年に山梨県のキャンプ場で小学校1年生の女の子が行方不明になった事件でも、直前までその子が他の子どもたちの遊びに加わるために歩いていく後ろ姿を母親が見ていましたが、母親から子どもが見えなくなった直後に足取りが途絶えてしまいました(参考資料5)。子どもから絶対に目を離さないこと、水辺では、たとえ水深が浅くても、子どもにライフ・ジャケットを着用させることが、水辺やキャンプ地で子どもを事故から守るために必要です。
屋外での体育の授業や外遊びの際には、子どもに水分補給や帽子の着用をさせるのは当然ですが、その前に、外での運動や遊びを行っても危険がないかどうかの確認を教員や指導者、保護者は行わなければなりません。その指標となるのが暑さ指数WBGTです。環境省の「熱中症予防サイト」(参考資料6)には毎日の全国各地の暑さ指数が掲載されているので、天気予報と併せて閲覧・確認しましょう。
表1:熱中症の日常生活に関する指針(参考資料6:暑さ指数について)
表2:熱中症予防の運動に関する指針 (参考資料6:暑さ指数についてより抜粋)
また車の中に取り残された子どもの熱中症も、死亡事故につながる危険な状態になります。JAFの実験では、エアコン停止5分で車内温度は35度を超え、15分で40度近くまで上がり、大人でも命に危険が迫るレベルに達します(参考資料7)。たとえ短時間でも子どもを車内に残さない、車を降りる時に後部座席を振り返って子どもを取り残していないかどうか必ず確認することが、子どもを車内熱中症の危険に晒さないために不可欠です。
【参考資料】