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調査研究・コラム

コラム

〈2022/08/09〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

コロナで出生数減少

神奈川大学 渡部かなえ

神奈川大学産官学連携研究事業

 

新型コロナウイルス感染症(以下コロナ感染症)のパンデミックの影響は、世界中で子どもたちの誕生にも大きな影響を及ぼしています。

表は日本、ヨーロッパで最初にコロナ感染拡大の中心地になったイタリア、次いで被害が大きかったスペインやフランス、コロナと前政権の移民抑制策で人口の伸び率が抑制された米国、コロナ感染症の拡大が世界で最初に起こった中国、世界で最も少子化が進んでいる韓国の、2019年と2020年の合計特殊出生率(1名の母親が生涯に産む子どもの数)です。合計特殊出生率(以下、出生率)は2.1を下回ると人口が減っていくとされていて、これまでも多くの先進国は少子化対策に頭を悩ませてきましたが、コロナの影響で子どもの出生率はさらに下がってしまいました。

イタリアでは、2020年に出生数の2倍近い約75万人が亡くなり、人口が大きく減りました。フランスはコロナ前までは出生率を上げることに成功している国でしたが、2020年には下がってしまいました。フランス国立経済統計研究所(INSEE)は、この背景にはコロナ感染拡大の影響があり、コロナ患者が多くいる病院への通院や出産に不安を感じるカップルが多かったと分析しています(参考資料3)。表中で出生率の低下が最も著しい中国は、政府のゼロ・コロナ政策が、カップルが結婚や子どもを持つことに大きな影響を及ぼしました。中国はパンデミックの前から出生数が減少していましたが、コロナの感染者が出ると住まいや地域が突然封鎖されるなど非常に厳しい政策がとられているため、妊婦が医療にアクセスできなくなる可能性が極めて高く、妊娠を避ける・先送りするカップルがさらに多くなりました。日本でも、2021年は2020年よりもさらに低下して1.30になってしまい(参考資料4)、コロナの影響で出生率の低下が一段と加速してしまいました。婚姻数も減少しました(参考資料5)。

イタリア、スペイン・フランスは出産育児の支援制度を拡充して少子化の急激な進行を食い止めようとしています(参考資料6)。しかし、感染の長期化が懸念される中、出生率が回復するかどうかも、出産育児支援を支える財政基盤のコロナのダメージからの回復も先の見通しが持てない中で、安心して子どもが持てる・子育てができる環境をどうやって整えていくか、難しい状況が続いています。

 

参考資料

1)The World Bank, Fertility rate, total (births per woman) 世界銀行, 合計特殊出生率

https://data.worldbank.org/indicator/SP.DYN.TFRT.IN?type=points

2)新華社通信, 2021年5月17日, 总和生育率低至1.3,我国是否跌入“低生育率陷阱”?

http://www.xinhuanet.com/politics/2021-05/17/c_1127456086.htm

3)Institut national de la statistique et des études économiques (INSEE),

Bilan démographique 2021, La fécondité se maintient malgré la pandémie de Covid-19,

https://www.insee.fr/fr/statistiques/6024136

4)厚生労働省, 令和3年(2021)人口動態道警月報年計(概数)の概要,

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

5)内閣府, 令和3年度少子化の状況及び少子化への対応施策の概況, https://www8.cao.go.jp/shoushi/

shoushika/whitepaper/measures/w-2021/r03webgaiyoh/html/gb1_s2.html

6)毎日新聞, 仏・伊・スペイン、出生数急減 4000億円規模の子供手当も,

https://mainichi.jp/articles/20210415/k00/00m/030/005000c

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