研究データ
〈2022/02/03〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
コロナ禍で子どもたちの不登校もパソコンやスマホを使ったいじめも最多に
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
不登校は、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的な要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの、と定義されています(文部科学省:資料1)。
文部科学省の調査によると、2020年の不登校の子ども(小中学生)は19万6127人で、過去最多となりました(資料2、3)。不登校の増加の原因・理由を、文部科学省は、一斉休校や分散登校などによって生活のリズムが乱れやすくなり、学校行事なども制限されて登校への意欲がわかなかったのではと分析しています。加えて、感染防止のためとはいえ、ソーシャル・ディスタンスを保つために友達と距離を取らねばならないことや、給食を黙って食べなければならないことなどを、子どもたちは大人が想像する以上に嫌だと思い苦痛に感じて、学校に行きたくない気持ちにつながっていたようです。
いじめの中のパソコンやスマートフォンを使った「ネットいじめ」は1万8870件で、これも過去最多となりました(資料3)。コロナ科で急遽リモート授業が導入され、子ども達にタブレットが渡されましたが、その学校配布タブレット端末によるいじめを苦にして小学生女児が自殺に追い込まれるという最悪の事態も起こってしまいました(資料4)。
<資料3>
学校だけでなく保育所もコロナの影響を受けています。保育所の休園が過去最大となりました(資料5)。子どもたちは休園中、ずっと家にこもりきりになってしまい、運動もできず、心身の健やかな育ちに深刻な影響が及ぶことが懸念されます。また保護者も保育所の休園中は子どものケアのために仕事を休まねばならず、社会的・経済的なダメージもはかり知れません。
次々と出現する変異株による新型コロナウイルス感染の再拡大が何度も繰り返され、その対応に学校園だけでなく地方自治体も政府も医療機関も翻弄されていますが、子どもの健康と命を守るためには、周囲の大人が子どもの状態や気持ちをわかろうと努力し、子どもと一緒に考え、できることを子どもと一緒にやっていくという、保育の基本姿勢が、どの年齢の子どもに対しても今は一番大切なのではと思われます。
【参考資料】
1)文部科学省, 不登校の現状に関する認識
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
2)文部科学省, 令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概
要, https://www.mext.go.jp/content/20201015-mext_jidou02-100002753_01.pdf
3)産経新聞, 2021年10月13日 小中学生の不登校最多 コロナで生活変化影響か
https://www.sankei.com/article/20211013-4BIC5UZPUZJ43LCG4EH4WWYFPM/
4)朝日新聞, 2021年9月14日 朝刊, 小6自殺、遺書に「いじめ」 配備端末で悪口書き込みか
5)朝日新聞, 2022年1月25日 朝刊, 保育所など休園最多 327か所