研究データ
〈2022/01/05〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
男性の家事・育児の時間が出生率に大きく関与
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
現在の人口を維持するのに必要な出生率(合計特殊出生率)は2.07ですが、日本の出生率がこの水準を上回ったのは1973年が最後です。出生率は下がり続けており、厚生労働省が2022年1月4日発表した2020年の人口動態統計によると、ついに1.34になりました。超少子化に陥る分水嶺1.5を下回ってしまうと、その後回復することは難しく、少子化がどんどん進んでいくとされています。
少子化に影響を及ぼす要因について様々な調査研究が行われていますが、家事や育児の負担の男女差が大きく、女性に家事や育児の負担が偏重するほど少子化が進んでいく傾向があることが、OECD(経済協力開発機構)の調査データで明らかになりました(図)。日本の家事・育児の男女格差は4.76倍です。0.92と日本以上に出生率が低くなっている韓国も男女格差が4.43と大きな国です。男女格差が2倍以内の国ではおおむね出生率は1.5以上を維持しています。(参考資料1-3)
家事・育児負担の男女格差と出生率
男性の家事・育児への参加支援として育児休業があります。制度としては実は日本は父親も母親も十分な育児休業が取得できることになっています。父親が取得できる育児休業で収入が保証されている期間は、日本はOECD加盟国など41か国の中で第1位です(参考資料4)。しかし、実際には、日本の父親の育児休業取得率は12.7%(2020年)とわずかです。2022年度からは改正育児・介護休業法が施行され、父親が子どもの生後8週間以内に最大4週間の育児休業が取れるようになります。日本の将来と子どもたちの豊かな未来のために、父親自身はもっと積極的に家事や育児に参加して母親にばかり負担がかかることがないようにすること、そして母親の職場だけでなく父親の職場も、育児休業の取得を推奨し支援していくことが不可欠です。
【参考資料】
1)世界銀行, 世界の合計特殊出生率, 2019年, https://www.globalnote.jp/post-3758.html
2)日本経済新聞デジタル版
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE308UG0Q1A830C2000000/?n_cid=NMAIL007_20211003_A&unlock=1
3)OECD, OECD Stat. Gender https://stats.oecd.org/Index.aspx?QueryId=54734
4)OECD, OECD Stat. Family database
https://www.oecd.org/els/soc/PF2_1_Parental_leave_systems.pdf