研究データ
〈2021/02/15〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】児童虐待・DV通告が過去最多
2021年2月4日に警察庁が発表した昨年1年間の犯罪統計情勢1)によると、児童虐待の疑いありと通告された件数は106960件で、前年比8.9%増、過去最大となりました。(図)。その内訳は、心理的虐待が78555件、身体的虐待が19452件、怠慢・拒否(ネグレクト)が8858件、性的虐待が295件でした。
児童虐待の7割を占める心理的虐待は、子ども自身への暴言や拒絶的な態度と子どもの目の前での家族への暴力です2)。配偶者からの暴力(DV)の相談件数(82641件)も前年比0.5%増で過去最多でした。
警察庁は、児童虐待やDV増加に対する新型コロナウイルス感染症拡大の関係について現時点では不明としていますが、緊急事態宣言中の幼児の歩数は減少しており3)、親子ともども不安やストレスの増加に加え、外出自粛による身体活動の不足と家族以外との接触機会の減少による影響が懸念されます。
日本小児科学会4)はウェブサイトで、感染リスクを下げるための注意事項を守れば屋外の遊びは可能との見解を示しています。公園の利用を控えるよう通達を出している自治体は多く、確かに遊具は密になりやすく不特定多数が触るというリスクがあります。しかし、子ども同士の感染リスクは実は低く、ほとんどの場合、大人が子どもにうつしています。大人が感染予防をしっかり行い、他人・他の子どもとの接触に気をつけて、家族や兄弟で外遊びの機会を持つことが、コロナ禍での児童虐待を防ぐ一助になると思われます。遊具やボールなどの道具を使う遊びだけが外遊びではありません。
前回の本コラムでも紹介させて頂いた自然と触れ合いながら遊ぶことは、感染の心配もなく、気持ちも良くておすすめです。
参考資料
1)警察庁, 令和2年の犯罪情勢, https://www.npa.go.jp/news/release/2021/20210128001.html
2)文部科学省, 虐待の基礎的理解,
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/09/28/1280766_2.pdf
3)朝日新聞デジタル, (フォーラム)外遊びできてる?:1 子どもたちは,
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20201220000125.html
4)日本小児科学会, https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=326