お問い合わせ

調査研究・コラム

研究データ

〈2021/01/15〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

【神奈川大学産官学連携研究事業】身近な自然を楽しもう

自然に親しみ、自然の驚異に目をみはる感性(センス・オブ・ワンダー)1)を豊かにすることは、どの年代にとっても必要ですが、自然や生き物を五感で知覚した原体験(proto-experience)がその後の事物・事象の認識に大きな影響を及ぼすので2)、子ども時代の自然体験はとても重要です。

また、レイチェル・カーソンは、子どもたちのセンス・オブ・ワンダーを育むために大人にできる・大人がやるべき一番大切なことは、「指導をすること」ではなく「子どもたちと一緒に自然を楽しむこと」と言っています1)。海や山での活動は有意義だしとても楽しいのですが、実は都会生活の中にあっても、身近なところに自然はあります。感染症拡大の影響で遠出がままならない今、ぜひお子さんと一緒に身近な自然に目を向けてみてください。普段気づかなかった面白いことや興味深いことが発見できると思います。

 

では、どんな風にやればいいかですが、神奈川県の葉山で自然体験活動を推進しているオーシャンファミリー(認定NPO法人)が、緊急事態宣言の発出で活動が制限されてしまっていた時に作成した、子どもたちと保護者のための身近な自然観察の手引き3)が参考になると思います。この手引きを参照して、神奈川大学の私のゼミ生(2年生)が2020年6月に姪っ子さんと行った活動の記録を紹介します。

 

①観察日:67日、天候:晴れ、観察場所:自宅周辺の道端と駐車場、観察物:蟻

道端と砂利の駐車場の隅で蟻を見つけた。蟻は列を作るように巣の間を行き来しており、巣穴は近い距離に何個かあった。巣穴は下でつながっていると思うが、どうなっているのか断面で見たい気もした。大きさは様々で、食べ物のかけら?のようなものを運んでいる蟻もいた。また、巣穴自体の大きさも様々で、意識して大きさを変えているのか疑問に思った。

 

②観察日:69日、天候:晴れ、観察場所:近所の公園、観察物:蜘蛛

公園に行くとトイレのドアのところと遊具の下に蜘蛛と巣を見つけた。トイレのドアにいた蜘蛛と巣、遊具の下にいた蜘蛛と巣では糸の太さも大きさも違った。トイレのドアにいた蜘蛛は500円玉くらいのサイズで巣を見ても糸自体が太くしっかりとしていた。遊具の下にいた蜘蛛は小さくものすごくすばしっこかった。巣の糸は細くすぐほつれそうだった。蜘蛛の種類は違うと思うが、食べる生き物のサイズも違うのだろうなと思った。

 

その他つぼみが膨らんで花が咲くまでを克明にスケッチしたり、アジサイの花の色の変化を観察し続けたりするなど、身近な自然についてのさまざまな楽しい素敵な報告が学生たちから上がってきました。

 

感染症拡大の状況が深刻で、二度目の緊急事態宣言の延長の可能性も示唆されていて、保育にもいろいろな制約が生じていますが、こんな時だからこそ、園やご家庭でも子どもたちと身近な自然を楽しんでいただければと思います。

 

参考資料

1)レイチェル・カーソン、センス・オブ・ワンダー、上遠恵子訳、新潮社、1996.

2)山田卓三、生物学から見た子育て、裳華房、1992.

3)認定NPO法人オーシャンファミリー海洋自然体験センター

自宅周辺の自然_子ども用

一覧へ戻る

TOP