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〈2020/04/01〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

【神奈川大学産官学連携研究事業】感染症と子どもの死因

新型コロナウイルスの感染が日々広がっており、保育士や子どもの感染も確認されています。高齢者と基礎疾患を持つ人は重症化する傾向がある一方、子どもにおいては感染者数も少なく、重症化もしにくいと言われています。しかし実際にどうなのかを確認するため、厚生労働省の発表(資料1・2)を基にグラフを作成してみました。
日本では子どもの感染者数は確かに少なく、重症化や死亡例はありません。最も感染者数が多いのは50代ですが、重症化する人が増えるのは60代以上で、70代以上では死に至る危険が高いことが分かります。

▲日本の年齢別人口(資料1)と新型コロナウイルスの感染者数・重症者数・死亡者数(資料2、2020年3月23日現在)

では、基礎疾患がない幼い子どもの保護者や保育士は、子どもの感染にあまり神経質にならなくてもよいのでしょうか?

 

5歳未満の子どもの死因を見てみると、日本の場合、第1位は先天的な障害、第2位は不慮の事故、第3位は出生時仮死など周産期に特異的な呼吸障害、第4位は悪性新生物、第5位は乳幼児突然死症候群で、感染症はありません。(資料3)けれど世界の5歳未満の子どもの死因は、半数近くが肺炎、下痢、マラリア、敗血症などの感染症です。(資料4)また、インフルエンザによる死亡も高齢者に偏っていますが、2018年には日本でも5歳未満の子ども5名の死亡が報告されています。(資料5)さらに新型コロナウイルス感染症でも、発症前の健康は良好だった子どもの死亡が米国で報告されました。(資料6)

 

感染症には、子どもがかかりにくい・かかっても重症化しにくい傾向があるものもありますが、子どもがかかりやすい・重症化しやすいものもありますし、どんな感染症でも重症化すれば死に至る危険があります。全ての感染症に共通する予防法は、感染源と接触しないことであり、手洗い・うがいを敢行してウイルスや細菌を体内に入れないこと、そして運動・栄養・休養のバランスを取って体力をつけ免疫力を高めることです。

 

【資料】
1)厚生労働省, 年齢(5歳階級)、男女別人口(2019年10月確定値、2020年3月概算値)
2)厚生労働省, 新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(2020年3月24日掲載分)(令和2年3月23日18時時点)
3)厚生労働省, 第7表 死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)・死因順位別, 平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況
4)ユニセフ, Levels and Trends in Child Mortality, https://data.unicef.org/resources/levels-and-trends-in-child-mortality/?q31cha8921=bptav71trjdbqgudka40, 2019
5)厚生労働省, 人口動態統計, 2018
6)CNN, 2020年3月25日報道

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