研究データ
〈2019/12/15〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】注意!SNSへの子どもの写真のアップ
TwitterやFacebook、インスタグラムなどのSNSには多くの個人が写った写真がアップされています。その中には子どもたちの元気な姿やかわいい様子が撮影されたものもたくさんあります。自分のアカウントでSNSのサイトにアクセスした際に、直接は知らないお子さんの写真が画面に表示されると、ほほえましく思う反面、「見ず知らずの不特定多数にこんな風に見られて大丈夫なのかな」と心配になります。
SNSにアップされた写真は簡単にコピーできますし、写真から様々な個人情報が特定されてしまったり、悪意のある加工をされてしまったりなど、何に使われるか分かりません。また、そういうものが拡散されてしまうと、消しても消しても、誰に見られるか分からない状態で永久にネット上に残ってしまいます。保育所や幼稚園では危機管理の観点から子どもたちの写真をネットに上げることには慎重な対応をしていますが、保護者の方の意識や考えは様々で、トラブルに発展する可能性があります。今回はSNSに写真をアップする際の注意について考えます。
今は高性能の画像解析・検索ソフトが簡単に手に入ります。顔写真1枚からネット上にあるその人の他の画像を見つけ出すことができます。1枚でも自宅の位置情報付きの写真があれば自宅までたどりつくことができます。
SNSに投稿された顔写真の瞳に映った景色を手掛かりに女性の住所を特定し、わいせつ行為に及んだ犯人が逮捕されたニュース1)は、SNSに写真をアップする際には細心の注意が必要なことを強く印象付けるものでした。建物の特徴的な外観や看板などが瞳に映っていれば、特別な画像処理をしなくても場所を特定できてしまいます。また、顔が小さめの(瞳に映った景色は判別できない)場合でも、車のボンネットやフロントガラス、ガラス窓や光沢のある壁面に映った周囲の様子や、写真にたまたま入ってしまったパソコンやテレビの画面に室内の様子が映っていると、場所を特定されてしまったり、プライバシーを暴露されてしまったりします。
情報処理推進機構の調査2)によると、「友人と一緒に写った写真を勝手に自分のブログに貼りつけて公開した」行為を問題だと答えた人は29.7%で、約7割の人は、他人が写った写真を公開することが問題だとは思っていないようです。我が子の情報をママ友などに勝手にSNSにアップされて心配なさっている保護者の方からの相談が、園に寄せられることもあります。実際に保護者の方がブログなどに載せた、プール遊びやお泊り保育でのお風呂、身長や体重計測をしている園児の写真が児童性愛者の手に入っていることが分かっています3)。海外では自分の子どもであっても写真をSNSに投稿しないよう、警察が注意喚起をしています4)。
子どもが犯罪に巻き込まれたり、物心がついてから嫌な思いをしたりすることがないように、子どもの写真をSNSにアップする際には、よそのお子さんを無断でアップしない(アップする写真と文字の両方をその子の保護者に見せて許可を得る)、子どもが大きくなって嫌な思いをしないかよく考える、個人が特定できる情報が映りこんでいたり書かれていないか確認する、公開範囲を限定する(不特定多数の検索されるハッシュタグ#は使わない)などの注意が必要です。
【参考資料】
1) 東京新聞, 2019年11月17日, 瞳に映る景色、狙われたアイドル SNS画像で住所特定
2) 独立行政法人情報処理推進機構, https://www.ipa.go.jp/files/000045505.pdf, 今月の呼びかけ(2019年5月)
3) 東京都私立保育園連合, https://toshiyo.net/db/doc/index.cgi?c=type1 ,都私幼連だより, 平成24年度都私幼連だより7・8月号(第251号), 2012
4) BBC, https://www.bbc.com/news/technology-34539059, German police warn parents over Facebook pictures of children(2015年10月15日).