研究データ
〈2019/06/10〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
【神奈川大学産官学連携研究事業】第13回 肥満・痩せの判定
子どもの健やかな育ちを計る1つの目安に肥満・痩せの判定がありますが、その判定方法には体重だけを用いるもの(同年齢の標準体重に対してどのくらい体重が多いか少ないかを%で示す)と、身長と体重の関係から導き出すものがあります。体重のみを用いる計算式は、年齢を問わず同じですが、
肥満度=
(実測体重)-(標準体重)
―――――――――――――×100
(標準体重)
身長と体重を用いる計算式には2種類あります。
ローレル指数=
(体重kg)×10
――――――――
(身長m)3
カウプ指数=
(体重kg)
―――――――
(身長m)2
幼児期(1~6歳)はカウプ指数が、7歳から思春期はローレル指数が用いられます。図1は1~20歳の男女の平均身長と平均体重から求めたローレル指数とカウプ指数のグラフです。幼児期はカウプ指数の方が生育年月の差の影響を受けにくく(1~6歳は変動が少なく、7歳以降は年齢による変動が大きい)、7歳以降はローレル指数の方が生育年月の影響を受けにくいことがわかります。ちなみにカウプ指数の基準値は16~19で、ローレル指数の基準値は110~160です。
20歳以降(成人)の肥満判定に使われているBMIは、実はカウプ指数と同じ計算式です。では、成人ではカウプ指数(BMI)が加齢の影響を受けにくいのでしょうか?そんなことはありません(図2)。
24歳くらいまではローレル指数・カウプ指数(BMI)とも年齢による変動はありませんが、25歳以降はいずれも加齢とともに変動が大きくなります。では、なぜ、肥満が生活習慣病との関係で問題になる中高年の肥満判定に加齢による変動が大きいBMIが使われるのでしょうか? それは、成人の場合は、年齢に関わらずBMI22前後が最も病気になりにくく死亡率も低いからです(図3)。
同じ計算式を用いていても、成長期の子どもと老化に向かっている成人では意味が違います。近年、大人の健康指標や健康法、ライフスタイルを子どもにもあてはめようとする場面がよく見られますが、子どもは成長していること、子どもの値の解釈には成長の速度や段階、身長期か充実期かなどの影響を考慮せねばならないなど、同じ計算式を用いていても大人とは違うのです。
<資料>
図1・2:国民健康栄養調査報告(厚生労働省)より渡部が作図
図3:NIKKEI STYLE 2017年11月14日付記事
「『理想的なBMIは22』は本当? 死亡率と微妙なズレ データで見る栄養学(4)」より引用
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO22943310R31C17A0000000/
Tokunaga K,et al.ldeal body weight estimated from the body mass index with the lowest morbidity.lnt J Obes. 1991;15(1):1-5.
【執筆者プロフィール】
顧問 渡部かなえ
神奈川大学人間科学部教授