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〈2019/03/11〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

【神奈川大学産官学連携研究事業】第10回 福島のお母さん・お父さんは頑張っています

2011年3月11日、東日本大震災と原発災害が発生しました。いまだ多くの人たちが復興への道半ばにあります。特に福島では、災害から数年経った後でも、子どもが元気に生まれて健やかに育つことに関して、お母さんたちが不安や悩みを抱えていることが報告されています1)。また災害で、お母さん(妊産婦)だけでなく、パートナー(夫)も様々なリスクに直面しました2)。では、日本の出生率が近年さらに低下したのは災害の影響なのでしょうか。

2016年の47都道府県別合計特殊出生率を見ると、福島は1.59人で全国12位、東北6県の中では1位でした。また、実は福島の2010年(震災の前年)は1.52人(全国17位)だったので、震災前より出生率が0.07人上昇しています(1.59-1.52=0.07)。出生率の全国平均値が低いのは、東京(1.24人)、京都(1.34人)、千葉(1.35名)、神奈川(1.36人)、大阪(1.37人)などの大都市圏や北海道(1.29人)の影響です。

北欧諸国と比べると、日本の親は必要な支援が十分に受けられているとは言い難い状況の中で子育てをしています(2019年1月の本コラム「第8回 少子化対策の成果が上がらない理由」を参照してください)。福島のお母さん・お父さんたちは、様々な悩みや不安を抱え、必要な支援や対応がさらに整えられていない現状の中で、頑張って子どもを産んで育てているのです。

▲都道府県別合計特殊出生率(単位:人)

 

【参考文献】

1) 成元哲,牛島佳代,松谷満:700 Fukushima Mothers Speak, 中京大学現代社会学部紀要8-2, pp.1-74, 2014.

2) 佐藤喜根子,佐藤祥子,斉藤礼子,菊池笑加,坂田あゆみ,黒河歩美,矢野目菜穂,小笠原麻里:震災時に産褥・妊婦であった女性とそのパートナーの心身の健康状態と周産期医療従事者の実態調査研究, 厚生労働科学研究費補助金(生育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)研究分担報告書

 

【執筆者プロフィール】
顧問 渡部かなえ
神奈川大学人間科学部教授

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