研究データ
〈2018/09/19〉
主任研究員 石毛賢
【保育士の専門性についての考察】第2回 専門性の前提は倫理観、人間性
第2回ということで、保育士の専門性に関して少し話を進めていきたいと思います。就業している場所により、保育所保育士や施設保育士とでは業務内容が異なりますが、本議論では、保育所保育士に焦点を当てて述べていきます。
まずは(保育所)保育士の専門性を議論するにあたり、保育士資格が国家資格であるので、厚生労働省から告示された「保育所保育士指針」からひもといていきましょう。
同指針の第5章で、求められる専門性の前提として、「倫理観、人間性、保育所職員としての職務及び責任の理解と自覚」が挙げられています。つまり、保育技術や保育の知識の造詣を深めることよりも、その前提である人としての倫理観・人間性・職業倫理が求められています。
具体的はどのようなことでしょうか?
保育士の倫理観に関して、全国保育士会より「全国保育士会倫理綱領」が策定されています。
(詳しくは、http://www.z-hoikushikai.com/about/kouryou/index.html)
本綱領の項目には、
の8項目が挙げられています。
本綱領には、保育士として子どもたちの現在・未来に対し責任を果たすべく、そのための決意表明の意味合いがあり、とても素晴らしい綱領です。保育者は、一度はご覧になっているかと思います。
倫理とは、「法的拘束力はないが、より良く生きるための社会的な決まりごと」と捉えた場合、「全国保育士会倫理綱領」は「保育士として、より良い保育を行う場合の決まりごと」と捉えられます。
つまり、現在・未来の子どもたちの姿(生活)をより良くするために、保育士としてどう在るべきか、その基本が述べられています。保育士の専門性を問う前に、本綱領を胸に刻むことからスタートすべきだと思います。
先日、保育事業従事者(経営者・保育現場責任者・人事担当者等)と保育士養成施設との意見交換会に出席させていただいた際に、「学校で何を学んできて欲しいのか」という質問をわたしがしたところ、「保育の技術や知識は、働きながら学べる、むしろこちら(保育事業者)で教えるので、学校では、社会性・人間性を育んで欲しい」との要望がありました。社会人として人としっかりコミュニケーションが取れること、「報・連・相」(報告・連絡・相談)ができること、同僚とチームワークが取れること等、保育士特有のスキルではなく、一般的な社会人としての基礎能力が問われているのです。
繰り返しますが、保育士の専門性を議論する前に、一人の人間として、子どもたち・保護者・同僚・上司・地域の方々に問われるということが、保育士の最初のハードルと言えるでしょう。
次回は、引き続き保育士の専門性についてお話ししていきたいと思います。よろしくお願い致します。
【執筆者プロフィール】
主任研究員 石毛賢
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ主任講師